思考錯誤

細かいことを気にしてしまう

個人的国内外チェスニュース6(7月投稿分)

 

※間隔が少し空いい蓄積してしまったため、おおまかな部分多いです。

 

【国外1】トップレベルのチーム戦(Global Chess League)

1 概要

 ドバイで開催された大会で、6チームの総当たり。各チームのトップはCarlsen、Anand、Nepomniachtchi、Aronian、MVL、Dudaといった超トッププレイヤー。各々のチームに2700オーバーのGM、女性トッププレイヤー、ジュニアトッププレイヤーなどが加わり、6人チームで戦った。自分も大富豪になってこのような夢のある大会を開いてみたいものだ。

 

2 結果

 Aronianが率いるTriveni Continental Kingsチームが優勝した。MVL率いるチームとの決勝戦においては、両チーム譲らず、チームの命運はBjerre(デンマーク)対Shindarov(ウズベキスタン)の10代プレイヤーどうしの対決に委ねられた。この大会の同一のカードでは、Shindarovが無敗だったが、最後の最後にBjerreが奮起し勝利。見事チームを優勝に導いた。

Triveni Continental Kings win the inaugural Global Chess League

 

【国外2】女王を決める戦い(FIDE Women's World Championship

 7月5日に世界女王を決めるマッチが始まった。現王者のGM Ju Wenjun(中国)にGM Lei Tingjie(中国)が挑戦する12ゲームマッチ。

 初戦はRuy LopezのBerlinという形になった。この定跡は、展開によってはすぐにドローっぽくなってしまうのだが(※もちろんGMクラスの話で私たちレベルではミスる)、白のLeiが工夫をし、ポーンを捨てる代償にビショップペアを持つ変化に入った。このゲームはドローとなったが、Leiの積極的なプレイスタイルは目を惹くものがあった。

 ドローが続いたマッチで初めにリードを奪ったのは挑戦者のLeiだった。白番でItalianという定跡を採用し、リードを奪い勝ち切った。ドローを挟んだ後、Juが星を返し、マッチは最終戦までもつれこんだ。

 最終戦は白番のJuは信頼を置いているd4定跡を選択。アンバランスで繊細な局面になり、双方拮抗したまま進めたが、エンドゲーム間近でポーンの形を変えたLeiの一手が疑問手に。これをしっかり咎めてそのアドバンテージを守り切ったJuが最終戦に勝利。4連覇を達成した。

 

【国外3】Rapid&Blitz大会、Carlsenが圧巻の指し回し

 2か月前にポーランドで開催されたRapid&Blitzにつき、今度はクロアチアで開催。今回も錚々たるメンバーで、同様にラピッド9試合+ブリッツ18試合を行った。

 ラピッドでは、以前世界王者戦で火花を散らしたCaruanaがCarlsenに勝利するなど、アツい展開がいくつもあった。Rapid終了時点ではCaruanaとNepoが同率1位に。

 しかし、前回のRapid&Bilitzと同様に、Carlsenがブリッツで本領発揮。世界のトッププレイヤー相手にドローをも許さぬ連勝を重ね、ポイントを積み上げた。RapidとBlitzを併せた総合スコアではCarlsenがトップに立ち、再び優勝を決めた。

Magnus Carlsen wins 2023 SuperUnited Rapid & Blitz

 

【国外4】W杯の組み合わせが決まり、1回戦スタート

1 概要

 日本からTuさんが出場することが話題になったW杯。7月上旬に大会の組み合わせが発表された。日本チェス連盟のサイトに、概要等が記された応援ページが公開されている。対戦相手の情報なども更新されており、日本語で記載されている点で貴重だろう(英語読むの大変勢の感想)。

FIDE World Cup 日本代表応援特設ページ | 日本チェス連盟

 

 1回戦は非シード選手とはいえ、2600オーバーのGMがたくさんおり、上述したShindarovのような選手もいる。Tuさんの初戦の相手も明らかに強豪だ。

 

2 国際的な事情との兼ね合い

 出場選手のうちFIDEの国旗の選手は、ロシアの選手かベラルーシの選手である。昨今の事情から、各スポーツ界で行われているのと同様に、参加方法や国旗表示の可否が定められているため、このような表示となっている。

 関連して、一定レベルのプレイヤーがチェス国籍を別の国に移すには、通常は高額の移籍金を払う必要がある(引き抜き抑止?)。しかし、最近では上記に関する場合の特例措置でヨーロッパへの移籍は、移籍金が免除になっている。この影響もあってか、チェス国籍を移す選手も複数出ている。

<一例>

Kirill Alekseenko Leaves Russia, Becomes New Austrian Number One - Chess.com

 

 また、一部の国の選手は開催地との兼ね合いで今回のW杯に不参加ということもあった。

 このような難しい点はある一方、無事参加することになったIvanchuk(ウクライナ)のほか、Svidler(FIDE)やGelfand(イスラエル)といった現役のレジェンドも参加しており、往年のファンにも楽しみやすい大会だろう。

 

【国内1】ジャパンチェスクラシック神戸

1 概要

 日本チェス連盟主催の国内のグレードの高い大会が、東京以外で行われるという点で、発表時から注目が集まっていた。加えて、定員が埋まった後に追加募集もされ、結果的に80名近いプレイヤーが参加した。南條さん、小島さん、青嶋さん、Tuさんをはじめとしたマスター陣も多く出場し、レベルの高い大会となった。

 最近行われた全日本チェス選手権は5日間9ラウンドだったが、本大会は4日間7ゲームゆえ、同ポイントの選手が増えてタイブレーク勝負になる可能性が相対的に高い。上位陣はポイントを削られないようにしたいところだろう。

2 FM青嶋さんが優勝

 上位陣でもしのぎを削る戦いに。オリンピアード代表も務めたBibby Simonさんは、小島さんに勝ち、青嶋さんからドローなど、入賞は逃したものの、さすがの実力を示した。

 最終戦の小島-青嶋戦につき、青嶋さんが勝てば優勝確定だが、ドロー以下なら他者も優勝の可能性があるという状況。小島さんらしいプレーでリードを奪ったが、クイーンエンディングになり最終的にはドローになった。

 最終戦を制した南條さんが同一ポイントに並んだが、タイブレークの差で青嶋さんに軍配が上がった。全日本に引き続き、タイブレーク(つまり対戦相手の成績など)で順位が決まる白熱した戦いだった。

ジャパンチェスクラシック2023-結果 | 日本チェス連盟

【大会実況】ジャパンチェスクラシック2023 in 神戸 第7ラウンド | 2023.07.17 - YouTube

3 その他

 本大会では、10代の選手をはじめとする若手の活躍が目立った。中継ボードに現れたなかった方の中でも、レート2000クラスの選手をアップセットするなど、顕著な活躍だ。今後、各々の実力も全体のレベルもさらに上がるだろう。

 SNSをみる限り楽しんだ選手が多かったようで、今後また大きな大会が首都圏以外で開催される可能性があるかもしれない。運営の皆様、お疲れ様でした。

 

【国内2】各クラブでラピッド公式戦

 赤羽では先月に引き続き7月上旬に行われ、8月も行われるようだ。加えて、月末には中野でも行われ、来月は川崎でも予定されており、クラブ主催のラピッド大会が増えている。最近では、クラブの公式戦も満員御礼になっているのを見かける。

 様々な業務を行っているであろう日本チェス連盟が、高い頻度で大会を行うことは人的なリソース面で現状大変であろうから、各クラブが主催となって公式戦(や非公式戦)が積極的に行われることは良いことだと思う。

 新しいチェスファンを増やすことは普及の面でもちろん重要だが、興味をもった人をチェスというコンテンツに引き留めることも、連盟かクラブかを問わず重要な目標だろう。

 

【国内3】GM同時対局

 8月上旬にGMのレクチャーや同時対局が首都圏&京都で開催される予定だ。筆者もどこかの日程で参加できれば感想を共有しようと思う。

 最近は他の若手IMの同時対局も開催され、この手のイベントも活気が出てきている。日本にいても中々対局できない相手だろう。飛行機代を使って海外に行くより安いのは間違いないし、迷っている方は参加していると良いかも。

「Meet GM Shoker!」同時対局 & ミニレクチャー | 日本チェス連盟