思考錯誤

細かいことを気にしてしまう

個人的国内外チェスニュース3

【国外1】The American Cup

1 オープン部門(GroupA)はHikaruが優勝

 The American Cupはアメリカのセントルイスで行われる大会。グループAは

・Hikaru Nakamura(2768)

・Fabiano Caruana(2766)

・Wesley So(2761)

・Levon Aronian(2745)

・Leinier Dominguez(2743)

・Sam Shankland(2710)

・Ray Robson(2702)

・Sam Sevian(2687)

アメリカの層の厚さが伝わる凄まじい面々。一般に、FIDEレート2700オーバーのGMをSGMと呼ぶことがあるが、ほとんどがSGMだ。彼らのプロフィールや細かいルールが気になる人は英語の公式サイト(以下)や各サイトの選手ページを参照してほしい。

https://www.uschesschamps.com/2023-american-cup/overview

 クラシカル(90分+1手30秒追加)からはじめて、決着がつかなればラピッド(25分+1手10秒追加)というように、決着がつくまで次第に時間を短くするスタイルで行う。プレイヤーは大変な一方、観る側としては同一カードで多くの試合を観戦できる可能性もある。

 決勝戦はHikaru Nakamura-So Wesley戦になり、3ドローの後、4ゲーム目の中盤でクイーンをトラップしたHikaruが優勝。優勝賞金5万ドルを手にした。上記の試合方式ゆえ、同一カードで多くの熱戦があり、同一カードならではの駆け引き(直前と同一のオープニングにするか等)もある。超ハイレベルの中でも色々なスタイル及びオープニングがあるため、プレイヤーなどに興味がある人を含め、いくつか棋譜をみてみるといいかもしれない。

 なお、この出場選手のインタビュー等が載っているセントルイスチェスクラブのYoutubeアカウントには、すさまじい数のチェス動画がある。40分くらいの動画が多いが、オープニングからエンドゲームまで様々な講師による様々な内容の動画が公開されている。とてもありがたい。海外経験がない私は、英語を聞き取れることができるところだけでも必死に聞いているが、講師によっては話すスピードがとても速い。動画の中でも、GMセイラワン氏のものはゆっくり話しており、英語に自信がない人でも比較的聞きとりやすいと思う。

2 女性部門はIrina Krushが優勝

 女性部門も一番レートが低い方で2300と非常にレベルが高い戦い。レートが一番高く実績も抜群のIrina Krushが優勝を決めた。なお、彼女は現在行われている世界王者決定戦のライブ解説動画(FIDEのアカウント)において、Anandと共に実況解説をしている。加えて、女性部門に出場しているAlice Leeは13歳でレートは2300後半。この大会の直前にあったオンライン大会では2700クラスにも一発入れており、今後も快進撃が続く可能性があり要注目だ。

 

【国外2】女性王者決定戦にはLei Tingjieが進出

 オープンの世界王者戦真っ最中だが、こちらも注目だ。女性の王者は現在Ju Wenjun(中国)で、その挑戦者を決める最終戦が行われた(Women's Candidates Final)。Lei TingjieとTan Zhongyiが勝ち残り、中国の2500オーバーのGM対決に。難解なエンドゲームの試合もあったものの、Leiがマッチに勝ち、挑戦権を手にした。この王者戦は夏に開催予定。

Lei Tingjie wins the Women's Candidates Final 

 

【国外3】オープンの世界王者戦、進行中

1 英語解説

 現在Nepo-Dingの世界王者戦が行われている。FIDE chess、Chess.com、Chess24などなど多くのYoutubeチャンネルでライブ配信&解説がされている上、アーカイブで視聴可能。画面のみやすさとしてはChess.comが良さげだが、解説陣の英語が筆者にとっては速くて追いつけない…その点ではFIDEの方がゆったりめだが、画面はちょっと見づらい。一長一短という感じだが、無料でSGM解説を知ることができるのはありがたい限り。興味がある方はいくつか試しに観て、合うものを視聴しましょう。

 ライブ解説のほかに、Dubov(Carlsenのセコンドも務めた才気あふれるSGM)が各ゲームの振り返り解説している動画もある。

GM Daniil Dubov analyzes Game 4 - Ding vs Nepomniachtchi - YouTube

2 日本語解説

 また、ゲームの翌日にはJCF(旧NCS)の公式チャンネルに山田さんの日本語解説がアップされている。ゲーム全般やプレイヤーの特徴を総覧することができる上、おすすめ。日本語で解説されている動画はほかのチェスチャンネルにもあるため、より深堀りしたい方はそちらもぜひ。

ついに開幕!世界王者はどちらの手に?!| Nepomniachtchi - Ding Liren World Chess Championship 2023 | Game1日本語解説 - YouTube

 

【番外】Carlsen、オンライントーナメントにおいてマウススリップで敗退

 Hikaruとの対局でドローっぽいエンディングに差し掛かった。とはいえ、クイーンエンディングという事故率が高そうな場面。Carlsenは直前に良い感じになったが…

 

これは発狂ですね…(しかもこれで決着に)。

 

【国内1】全日本選手権の予選、すべて終了

 3月末の土日に、複数の大会が行われ、全日本選手権の予選が終了した。その一部を紹介したい。

 神奈川選手権は川崎チェスクラブが運営する2日間6ラウンド制の大会。古谷さんが5ptで優勝。キャンセル等もあったようだが、最終的にはIMの南條さんも参加しており、予選としてはレベルが比較的高そう。筆者も現地でいくつかゲームをみたが、レートが1000前半やURの人の中には2000代からポイントを奪う等かなり強い方もおり、熱戦。観て勉強になるゲームが多かった。

 西東京は1日4ラウンド。2日間参加できない人には行きやすかった一方、神奈川などと比べると既に権利を持っている人が少なく、権利を狙う人にとっては大変な大会だったようだ。

 また、東北も全日本を狙うには最終日とあって遠征の方々もおり、白熱した模様。最後のゲームにおいては、会場都合でドローになったゲームがあったようだ。

 ゴールデンウィークまで1カ月を切り、全日本選手権及びゴールデンウィークオープンが近づいている。前者も選手が出そろってきた。後者は満員になり盛況(※東京チェスではキャンセル分が再募集されたため、逃した人は念のためツイッター等の公式情報をこまめにチェック)。アクティブプレイヤーが増えることはとても良いことだと思う。

 

【国内2】全日本ユース及びカデッツ開催

 両大会が4月上旬に開催された。公式Youtubeには上位3ボードの中継があり、アーカイブも視聴可能だ。実況及び解説もわかりやすい。近年は大会に参加する若いプレイヤーが増えており、かつ、実力もどんどん上がっているように感じる(どういう感じかは以下の実況動画なども参照)。彼ら彼女らの将来が楽しみである。

【18歳以下最強決定戦】全日本ユースチェス選手権2023 第1ラウンド | 2023.04.01 - YouTube