思考錯誤

細かいことを気にしてしまう

個人的国内外チェスニュース2

【世界1】WR Chess Masters、Aronianが優勝

ドイツで開催された上記の大会は、総当たり9試合。10人の超ハイレベルなGMでの戦い(一番低いレーティングでも2675!)。

(1)Benko gambit登場

 まず、チェスの内容面として、Nodirbek(※Tataという最近行われた大きな大会で大活躍した10代の若きスーパーGM、世界15位)が対Nepo(※前回の世界王者戦の挑戦者であり、この春に行われる世界王者戦も出場する、世界2位)戦で採用した定跡が話題になっていた。

 彼はベンコー・ギャンビットという定跡を採用した。この定跡は白のd4に対して、黒番ながら序盤早々ポーンを1個捨てて駒をどんどん展開していく定跡。クイーンズ・ギャンビットは『ギャンビット』と名を冠しているものの、後でポーンを取り返しやすい定跡だが、今回のベンコー・ギャンビットは、多くの場合に黒が早々と純粋ポーン損になる『ザ・ギャンビット』という感じの定跡だ。

 この定跡は高レート帯(特に長いタイムコントロール)では中々お目にかかれないものだ。その一方で、アマチュア等ではまだまだ人気という感じの定跡であるため、湧いたという感じである。この対局はドローになった。

 上記のほかにもプレイヤーとしては内容として好奇心の湧く対局もあるので、余力のある人は眺めてみても良いかもしれない。

 

(2)熱戦の末にタイブレーク

 9ラウンドを終えて、5.5ptが3人、4.5ptが1人、4ptが6人と全プレイヤーがひしめきあうような結果に。トップ集団の3人であるNepo、Gukesh、Aronianがタイブレークで10分+2秒のミニリーグを行い、Aronianが優勝した。途中までAronianはトップを走っており、Nepoに負けてタイブレークとなったものの、最後は彼の強さを見せつけた形だ。

The final classical standings of the #WRChessMasters are very unusual, with 3 players tied for 1st place, Wesley So in 4th on 50%, and 6 players in last place on -1! #c24live pic.twitter.com/9Zxv0tUYXk

 

 なお、Aronianは現在はアメリカ勢だが、もともとはアルメニア出身であり、アルメニアオリンピアード活躍の一端も担っていた。また、チェスのワールドカップトーナメントでも優勝経験がある等、これまでも著しい活躍をしている。私見としては、終盤であっても、勝ち方が複数あるときでもかっこいい選択肢を選ぶイメージが強いので、才気あふれるチェスをみたい人はNotable gameなどを見てみるといいかもしれない。

 

【世界2】Adams、相変わらずカッコいい

 Adamsイングランドの(大?)ベテランプレイヤーで、マスターの棋譜などで勉強している人は知っている人もいるだろう。有名な名局集であるマンモスブックにも彼の対局が載っている。正統派e4プレイヤーで以前ほどはトーナメントに出ていないものの、2600代後半という強さ。個人的に好きなGMの一人であり、新たな彼の棋譜を観ることができてうれしい限りだ。

 

 

 

【日本1】全日本選手権予選、続々と開催される

(1)概要

 中四国予選に引き続き、2月19日(日)には愛知チェス選手権及び神戸チェス選手権が開催、25日(土)~26日(日)には千葉選手権が開催された。

 今更だが、全日本選手権の位置づけを簡単に説明したい。全日本選手権は毎年ゴールデンウィークに行われる大会で、将棋における名人戦のような感じ。並行して、ゴールデンウィークオープンという大会も開催されており、いずれも国際レート戦(FIDE戦)である。ただし、全日本選手権の方は一定の出場資格が必要だ。この出場資格を得る手段の一つが、現在各地で開催されている予選の好成績者である。この各地の予選は、全日本選手権の予選でもあるが、一般的なNCS(日本チェス連盟)の大会でもあって、全日本に出る意思がない人も参加可能である。そのような参加者のグラデーションやご本人の都合によって、権利を獲得する結果を残した人でも辞退するケースがあり、その場合は参加資格が次の好成績者へとずれていくシステムだ。

 

(2)愛知チェス選手権 (詳細:NAGOYA CHESS CLUB

 各地域の結果を簡単にみていきます。まず愛知チェス選手権は、3.5ptで二人が並び、若森さんが優勝、そのほか3名が権利獲得。定員いっぱいの20人の参加者に対して、8人が1700オーバーという構成で、結構レベルが高そう。この大会に参加した篠田さんは、NCSのOPENRECのエンドゲーム講座の中で、この大会でのエンドゲームの一部を紹介しているため、興味のある人はチェックしてみるといいかも。

 なお、名古屋チェスクラブさんで行われた大会結果については、JCA(NCSより前の日本のチェス団体)の頃のものを含め、上記ホームページで確認できる。Chess-resultsがスタンダードになる前から独自にしっかり記録を残されていて頭があがらない。

 

(3)神戸チェス選手権

 chess-resultsによると、3.5ptで牧野さん、Jonesさん、松尾さんの3人が並んだようだ。参加した友人は、上記の入賞プレイヤーと指す機会があり、勉強になった模様。少なくとも現在の日本では、2000オーバーのアクティブプレイヤーはそこまで多くないため、OTBで真剣勝負できる機会においては、勝ちたいのは第一であるものの、長期的な目線では自分の糧になるのは間違いないだろう。友人のレートもきっと今後上がるに違いない。

 なお、夏には神戸でジャパンチェスクラシックという大会が行われる(

ジャパンチェスクラシック2023 | National Chess Society of Japan - NCS)。これも国際レート戦だ。すでに申込みが始まっている上、強豪プレイヤーも既に名を連ねているため、興味がある方は要チェックだ。

 

(4)千葉チェス選手権

 千葉は2日間6試合。定員まで申込みがあったようで活気のある大会であろう。優勝は前回のオリンピアード女子選手でもあった坂井あづみさん(5.5p)。2000オーバーの選手が5人いる中、2日目にトップを走り続け5試合目まで全勝だったようだ。付随して、彼女の参加している?せとうちチェスクラブも盛り上がりそう。

 千葉ではキッズの大会も何度か開かれているので、親御さんはぜひチェック。また、今回活躍された坂井夫妻のブログがあるので、興味ある人はみるといいかも(チェス夫婦 E&Aのチェスブログ)。

 

(5)東京チェス選手権

 最大規模の上記の予選で、70名程度の参加者で2日間6試合。早々定員になり、キャンセル分の受付もすぐに埋まったようだ。アクティブプレイヤーが増えるとはとても良いことだと思う。参加者もマスターからURの方まで非常に幅広い。この大会の上位ボードは局面配信(Chess.com)かつYoutube公式チャンネルで解説ありとリアルタイムに情報収集可能だった(アーカイブも閲覧可能)。

 優勝は全勝の長瀧さん。1月頃に行われたクローズドのラウンドロビン戦でも優勝しており、実力は確かであった。レートも2000に乗る見込みで、今後の活躍も楽しみだ。

 

【日本2】3月25日~26日、チェスイベント超充実

 神奈川チェス選手権、西東京チェス選手権、東東京チェス選手権、東北チェス選手権、北海道チェス選手権、川越でのGM来日イベント等々、ガチプレイヤーもエンジョイ勢も満喫できそうな充実度だ。選手権に関しては、2日制も1日制もあるので、日曜だけという人も行きやすそう。体が二つあれば選手権一つとGMイベントに行きたいところ。特に予定を決めていないチェス好きの人は絶好のチャンス、ぜひ楽しんでほしい(現場被りがきついという人もいるだろうが…)。